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「潤一郎ラビリンス」の検索結果

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潤一郎ラビリンス〈1〉初期短編集 (中公文庫)

発 行 日 : 1998-05
頁   数 : 278
ランキング : 179083
著   者 : 谷崎 潤一郎/
定   価 : ¥ 880
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■カスタマーレビュー

総合おすすめ度: 4.5

マゾヒスト、谷崎の出発点
おすすめ度: 4
大正元年というのははたして何日または何ヶ月あったのかは、記憶に定かではありませんが、ここに収められているのは、明治の終わりから大正2年までの谷崎の作品です。こんな作品を初期に書いていたというのは驚きでした。伏字が入っているのこそ「瓢風」だけですが、こんな作品がこの時代に出版を許可されていたというのは驚きです。そして全編を貫くマゾヒスティックなテーマは現代でも十分理解可能なものですが、理解可能などころか現代性をいまだに失わないといった方がいいのかもしれません。舞台は、ほとんどが東京です。しかし全編にちりばめられている小道具そして風俗さらには風景は、それらを語る平易な口語体にもかかわらず、もはやリアルな現実感覚を持って対応するには、もはや私には不可能なようです。それにもかかわらず、全編を貫くテーマ自体は、リアルに迫ってくるというのは、日本人自体はそんなに変わっていないといういい証明であり、谷崎という作家の時代を超えた普遍性なのかもしれません。どれも同じようなテーマを扱った短編のアンソロジーですが、私は「瓢風」を薦めます。ところどころに現れる陳腐さと平板さにも関わらず、結末はショッキングなものです。

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潤一郎ラビリンス〈11〉銀幕の彼方 (中公文庫)

発 行 日 : 1999-03
頁   数 : 318
ランキング : 197703
著   者 : 谷崎 潤一郎/
定   価 : ¥ 880
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■カスタマーレビュー

総合おすすめ度: 4.0

映画という新しい世界認識
おすすめ度: 4
3篇の作品と数編の映画についての評論が収められています。「人面疽」はのっけからその奇怪なテーマで読者を驚かせてくれます。この作品には、最後まで謎の解読はありません。映画と現実が交錯する部分での謎の創作こそが著者の特徴です。そして谷崎の犯罪小説(?)の帰結でしょうか、その謎には、論理的な解決はなく、谷崎の想像力が生み出したその全体像を味わうだけです。2番目のアヴェ・マリアはちょっと収まりが悪い作品のようです。その長さといい、最後まで私にとってはとっつきの悪い作品でした。登場人物の特徴や作品の舞台等を考慮すると、むしろ「横浜ストーリー」アンソロジーに収めた方がよかったのかもしれません。3番目の「青塚氏の話」はこの3篇の中でのベストです。ストリーの構成は、劇中劇の形態(女優の夫である映画監督の遺書の開陳)をとっており、その夫が不思議な人物に邂逅する話です。ここには映画という技術が可能にした新しい世界認識の可能性が、様々な谷崎なりのキッチュを使いながら呈示されていきます。新たなる「分身」譚の誕生です。また、現代版の「おたく」の原型といっていいのかもしれませんが。その後に続くいくつかの評論は、短いながらも、谷崎の創作手法への貴重なヒントを与えてくれるものです。「過酸化マンガン水の夢」は、不思議な作品です。このドライな題が示すように、その形式は、熱海からの上京を描いた雑記帳のような物です。しかし、ここには、著者が起床し、電車に乗り、食事をし、劇場に出かけ、また眠りにつくという一連の日常の推移の中で、どのように現実と夢のつながりを知覚して、自らの作品のヒントにしていたかが、赤裸々に語られています。ちょっと語りすぎといってもいいくらいです。「出張撮影に就いての観想」には、京都や奈良を舞台にしての夢の国土、つまり「過去の夢」の「現在の世界での実現」が語られているほどです。

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潤一郎ラビリンス〈10〉分身物語 (中公文庫)

発 行 日 : 1999-02
頁   数 : 341
ランキング : 410114
著   者 : 谷崎 潤一郎/
定   価 : ¥ 880
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■カスタマーレビュー

総合おすすめ度: 4.5

the me I never knew
おすすめ度: 4
分身物語とは見事なタイトルです。中身は対立とコントラストに彩られた3つの作品が含まれています。どれが一番訴えかけるかは読み手それぞれに依存するようです。第一編は、不思議な芸術家の相克を描いた作品です。推理小説のパターンをたどりながらも、終わりは皮肉なものです。第二編は、ちょっと鼻につく論旨の展開です。一方の当事者によって開陳される愛の哲学はどうも最後までしっくり来るものではありません。しかしながら最後までAは自分の哲学を変えることはなくそういう意味では徹底しています。第3篇が私にとっては、一番のお気に入りです。ここでもたしかに2つの分身が描かれますが、初めてここでは、一人の人物の分身が描かれることになります。ここでは大正初期の最先端の風俗を題材としながらも、見事な対立構造を描き出しています。奈良の山奥と都会の最先端やパリ、この西欧と日本の対立の構図に投げ出されたのが、主人公というわけです。この作品の結語は、皮肉ながらも、後の「陰翳礼讃 (中公文庫)」のテーマにつながるものです。318ページの、「親子3人が古いお堂の仏像の前に合掌するシーン」の主人公による歴史的な解釈は日本人の琴線に触れるものかもしれません。最後は震災後の神戸が舞台となっており、いよいよ谷崎の後の関西時代への飛躍とモダニズムへの別離を暗示するものとなっています。

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潤一郎ラビリンス〈12〉神と人との間 (中公文庫)

発 行 日 : 1999-04
頁   数 : 347
ランキング : 196673
著   者 : 谷崎 潤一郎/
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■カスタマーレビュー

総合おすすめ度: 3.0

不思議な三角関係
おすすめ度: 3
3篇の作品が収められています。しかし大部分は「神と人との間」が占めています。残りの二編は全部で50ページほどです。この「神と人との間」は長編といっていいほどの作品です。震災をはさんで相当長期間にわたって連載された作品のようで、この作品の深い背景の理解には、小田原事件と谷崎の複雑な女性関係の知識が必要ですが、これはこのアンソロジーの解説を読んでいただくのが近道です。この背景を除いて作品それ自身に対処した場合は不思議な作品といわざるを得ないようです。まず作品は、作品中での添田(谷崎)をあくまでも第三者として描くという倒錯した構造になっています。作品の成立の由来のためか、作者があくまでも公平な視点を維持しようとしたかのようです。もっぱらストリーは穂積(佐藤春夫)の視点から彼の変貌を描くのが視点とされています。したがって添田はその悪魔性と倒錯したサディスティックな人間性がこれでもかと描かれることになります。それに対比されるのが、マゾヒスティックともいうべき、穂積のパーソナリティです。この両者とも異なるのが、徹頭徹尾、他律的なものとして描かれる朝子の「女性像」とその女性像が男性にとって持つ魅力です。話は相当の長期にわたって展開されますが、この三角関係の幕引きは犯罪小説の臭いを濃厚に漂わせています。しかしながらこの幕引きという意図的な行為の結果は、この特殊な構図の関係を崩壊させてしまい、この構図への参加者の存在意義を消去してしまうようです。「鶴唳」はその始まりの風景描写は、谷崎には珍しいほどのさわやかな小田原の風景描写で始まりますが、結末は足場を失った人間の崩壊という陰惨なものです。

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潤一郎ラビリンス〈9〉浅草小説集 (中公文庫)

発 行 日 : 1999-01
頁   数 : 308
ランキング : 180875
著   者 : 谷崎 潤一郎/
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総合おすすめ度: 4.0

未完の「鮫人」
おすすめ度: 4
作品については「鮫人」さんのレヴューが見事なのでそちらを読んでください。またこの作品に収められている千葉氏の「坩堝としての浅草」も見事な解説です。私にとっては、震災前のこの短い「時代相」が鮮やかに描かれているという印象が強く残りました。このラビリンス集はすべてこの時代(大正)に書かれた作品が中心なのですが、「浅草集」という形でまとめられたこの巻を読んでみることにより、この時代の相貌がより鮮やかに浮き彫りにされたようです。驚くべきことに、鮫人は、第一次大戦中の話にもかかわらず、そこにはまったく戦争や政治の影といったものが出てこないのです。ここに示されるのは、関東大震災前に花開いた浅草の繁華街とそこに巣くう様々な人間像に代表される大衆娯楽の自律的な存在です。それは、必ずしも美しい光景ではありません。食事や場所、人間関係などは奇妙な混合をなしています。浅草オペラに代表される、ある意味ではまがい物とも言うべきキッチュが満載の浅草は現代人にとってはもはや想像の世界にしか存在できない不思議な存在です。鮫人は最後まで推理小説の要素をはらみながらも、謎を呈示するだけで、前編だけで中断されてしまいます。関東大震災によって浅草という現実のキッチュが崩壊した中では、この不思議な作品を内在的に完成させる動機を維持することは不可能になったのでしょうか?

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潤一郎ラビリンス〈7〉怪奇幻想倶楽部 (中公文庫)

発 行 日 : 1998-11
頁   数 : 299
ランキング : 192662
著   者 : 谷崎 潤一郎/
定   価 : ¥ 880
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総合おすすめ度: 3.5

美食倶楽部は英語で読んだ方がいいかも
おすすめ度: 3
まとめ方では、著者のかなりの数の作品がこの表題「怪奇幻想倶楽部」の下にまとめられてしまいますが、「病蓐の幻想」は歯痛を題材とした作品です。「白昼鬼語」はたしかにシャーロックホームズとワトソン張りの形式を取っていますが、その話の原動力は、決して論理には還元できない何者かです。最後には、おちが用意されていますが、高揚感や論理の明晰さはそこには伺えず、不思議な読後感です。次に続く二編は、文体も変わり、どちらかというと今昔物語ばりの童話のようです。最後をしめくくるのは、有名な「美食倶楽部」ですが、これも不思議な作品です。最後は、私たちがその形象や臭いでイメージする料理の枠を超えてしまいますが、むしろ作者が、自らのエロチシズムを求める不思議な感覚を、料理という具象を通じて伝えようとしているかのようです。232ページや286ページのシーンは、それぞれ料理の描写(前者は貝、後者は高麗女肉)という形を取っていますが、何か別なものが示唆されているようです。

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潤一郎ラビリンス〈3〉 (中公文庫)

発 行 日 : 1998-07
頁   数 : 303
ランキング : 272639
著   者 : 谷崎 潤一郎/
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■カスタマーレビュー

総合おすすめ度: 4.5

明治の末に生まれた新しい人間像
おすすめ度: 4
この第3巻に収められている2編、「新童」と「異端者」、は谷崎理解への必読の作品でしょう。どちらも谷崎の青年時の告白編といっていいでしょう。もちろん谷崎らしくここにはさわやかな読後感なるものを期待するのは間違いです。この作品から浮かび上がるのは、驚くべきほどの自意識過剰の早熟した人間像です。そして余りあふれるほどの才能にもかかわらず、国家社会への意識が欠落した人間像です。前半は第一高等学校入学前(1904年前)の時期、そして後者は東大入学後(1908−1909年)の時期が対象となっているはずです。ところがこの2編のどこにも、日清並びに日露戦争をうかがわせる言及は一箇所もありません。ここに繰り広げられるのは没落した商人階級の家庭の貧窮した内情です。幸運のにも高等教育の機会を得、美意識に目覚めた(神童にはその発端が描かれます)主人公は、ここから抜け出そうともがくなかで抜け出せない焦燥感が告白されます。主人公の自意識過剰は、他者や身内への行き場のない冷酷さと、社会生活上の放蕩となって現れますが、ラスコリー二コフの哲学をうかがわせるほどです。驚くべきことに、ほぼ同年の啄木はもっとひどい境遇で、最後は社会的な意識がより強く出てきますが、谷崎の場合は最後までそのような大きなイデオロギーに眼が向くことはありません。この時点では整理のできない自意識を解明するために、「美」と「性」の深遠の探求に進むことになります。東京出身の谷崎には自然主義というがさつな「田舎物のルサンチマン」に逃避するには、余りにもこの「美」の持つ魅力にすでに触れすぎてしまっていたのかもしれません。

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潤一郎ラビリンス〈2〉マゾヒズム小説集 (中公文庫)

発 行 日 : 1998-06
頁   数 : 288
ランキング : 101944
著   者 : 谷崎 潤一郎/
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総合おすすめ度: 4.0

まだ小説の作品としては稚拙かな
おすすめ度: 4
ちょっと電車の中では読めないタイトルです。といいながらも堂々読んでしまいましたが。でも中身を貫くモティーフは第一巻と余り変わりません。そうすべてがマゾヒズム的人間像です。この二巻の中でも様々なマゾヒズム的人間像が描かれます。時代の刻印を受けながらもこの時代で、このような人間像を描くというのはよほどの内的欲求がなければありえないことです。ただ短編という媒体の拘束でしょうか、テーマは突き詰められてその結末まで進むことはありません。背景と小道具は和洋折衷です。前時代を引きずりながらも小道具は信じられないほどモダンを究めています。登場人物はいつも共通する内的欲求に促されながらも、やはり時代の拘束の中で動き回らざるを得ません。最初の、「饒太郎(なんと読むのでしょうか)」の結末は、一面しらけさせるものですが、別な意味で納得感を与えるものでもあります。「赤い屋根」も不思議な作品です。登場人物はほとんどが非関西地域の出身ですが、これは舞台が西宮になっており、小道具の設定と文脈の中では十分この場所の設定を生かしています。Lane Crawfordが神戸にあったんですね。たしかにちょっと角度と切り口を変えてしまえば、どれもすぐに江戸川乱歩の作品につながる作品です。このデカダンスと変態の流れは、決して正面から是認されることはありませんが、一つの大きな流れだったのでしょうね。

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潤一郎ラビリンス〈13〉官能小説集 (中公文庫)

発 行 日 : 1999-05
頁   数 : 323
ランキング : 123078
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総合おすすめ度: 3.5

大正2年の作品です
おすすめ度: 3
「熱風に吹かれて」と「捨てられた私」は大正二年に発表された作品だそうです。熱風はその名のとおり夏が舞台であり、「捨てられた」は12月から4月までの時期が舞台になっています。この二作はどちらもある意味では谷崎が理想とした女性像についての倒錯した感情を扱った作品ですが、このような中篇を立て続けに生み出した谷崎の当時の精神状態とは不思議なものです。そういう意味では、結末は違っているにせよ、兄弟のような作品です。どちらの女性もすでに他の男性の痕跡が残っている人物であり、このような女性を理想像とし、そこに自分が奴隷のように使えるという姿を描いた点で、発表時は、相当スキャンダラスな反響を引き起こしたのかも知れません。どちらの作品も谷崎の自意識過剰なマゾヒスティックな女性観を示す部分が満載であり、この著者が大正の初めにはどのようなとんだ芸術観を持っていたのがよくわかります。ただこのどちらの作品にも登場する女性の「狡猾さ」は別として、生活感や現実感のなさはどうしたのでしょう。またどの作品もその長さにもかかわらず、格別のドラマティックな展開を見せることなく、ただ谷崎の女性観に付き合わされたという後味の悪さが残る作品です。

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潤一郎ラビリンス〈8〉犯罪小説集 (中公文庫)

発 行 日 : 1998-12
頁   数 : 291
ランキング : 170101
著   者 : 谷崎 潤一郎/
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総合おすすめ度: 3.0

いやはや
おすすめ度: 3
犯罪小説という題ですが、たしかにいくつかは推理小説の形式を踏襲しようとしていますが、作者の関心はプロットの構築とその理知的な解明にはありません。形式という意味での斬新さへの努力は、「途上」と「呪われた戯曲」に顕著です。前者では確率論的な犯罪の動機が提示されます。でもどちらも謎の顛末自体はすぐに暗示されてしまいます。そこから先は謎やプロットの解明ではなく、むしろその謎を作り出した主人公の異様さが積み重ねられていくだけです。そしてどちらもその結末は主人公の世界の崩壊です。そしてこの両作品と「ある調書の一節」に共通する女性像は共通したものです。ただどれも妻殺しを題材としたこれらの作品を生み出した谷崎の脳裏をさまよっていた観念とはいったいなんだったのでしょう。こんな作品ばっかり書かれたしまったら、本当の実生活上の妻の立場はどうなるのでしょう。

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