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漱石の思い出 (文春文庫)

発 行 日 : 1994-07
頁   数 : 462
ランキング : 82455
著   者 : 夏目 鏡子/松岡 譲/
定   価 : ¥ 710
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■カスタマーレビュー

総合おすすめ度: 4.5

結局これが漱石周辺本の中でいちばん面白いのでは?
おすすめ度: 5
自分は漱石の周辺本(漱石自身が書いたもの以外の漱石本)をかなりの量バサバサと読んできたが、最近この本を読み返してみて思ったことは、おそらくそういう周辺本のなかではやっぱりこの本がいちばん面白いということである。(ちなみに虚子の書いた回想子規+漱石(これはちょっと短いが)もかなりおもしろい。) この2冊に共通なことは、漱石の日常の空気感みたいなものをそのまま正直に伝えようとしているために、漱石という存在が支離滅裂に描かれていることで、出来事のロジカルな関係性や意味をかなり無視した内容になっている。またこの2冊では漱石のネガティブな一面が正直に描き出されているので、そういった意味でも現実の漱石に近づけた気持ちになることができるのもうれしい。

たしかに研究者や弟子が書いた本にも面白いものはある。しかし結局そういう本は結局書いているひとのエゴというか主張というか希望によって漱石を型にはめ、美化し、磨き上げて立派な銅像にしてしまっているのがほとんどである。そりゃ漱石研究の結果として発表するわけで、「いろいろ研究したけど、なんだかやっぱりぜんぜんわかりませんでしたぁ」というわけにはいかないのであるが、そういう研究書はロジカルで統一感のある漱石のイメージを作り出すために、現実の漱石からはだいぶ離れてしまうという結果になる運命からはどうしても逃れられない。そういう研究本はなんだかエジソンの伝記を読んだみたいな嘘くささが充満していて、結局読んだ後、時間の無駄だったー、という感じがつきまとってしまう。それらの本にくらべると、この本は、とにかく「思い出」というだけあって、思い出したことを単に手当たりしだいゆるく記述しているので、まとまりもへったくれもないかわりに、不思議な現実感が充満している。

この本を手にするのは、どちらにしても自分のように当然かなり漱石に興味を持っている人だと思うが、漱石自身の書いたもの以外でさらに漱石に近づきたいと思うなら、まずこの本をおすすめしたい。もしかするとちょっと意外な内容かもしれないが、そういう点でも面白いと思う。

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